ききょう (桔梗) 

学名  Platycodon grandiflorus (P.grandiflorus var.glaucus, P.glaucus)
日本名  キキョウ
科名(日本名)  キキョウ科
  日本語別名  アリノヒフキ(蟻火吹)、オカトトキ
漢名  桔梗(ケツコウ,jiégěng,きちこう・ききょう)
科名(漢名)  桔梗(ケツコウ,jiégěng)科
  漢語別名  梗草(コウソウ,gĕngcăo)、僧冠帽(ソウカンボウ,sengguanmao)、白藥(baiyao)、鈴鐺花(レイトウカ,lingdanghua)、包袱花(ホウフクカ,baofuhua)、綠花根(リョクカコン,lühuagen)、道拉基(ドウロウキ,dàolājī)
英名  Balloon flower, Japanese bellflower
辨  キキョウ科
   キキョウ属


 

2007/04/19 薬用植物園

2006/08/13 神代植物公園

2005/09/04 昭和公園

2005/08/02 薬用植物園

シロギキョウ  f. albiflorus   2005/08/11 国分寺市 殿ヶ谷戸公園

  八重の自生品   2016/08/25 長野県霧ヶ峰
 

 キキョウ科 Campanulaceae(桔梗 jiégěng 科)には、世界に約86-88属 約2300-2400種がある。

  ツリガネニンジン属 Adenophora(沙參屬)

  シデシャジン属 Asyneuma(牧根草屬)

  ホタルブクロ属 Campanula(風鈴草屬)
      incl. Popoviocodonia

  ツルニンジン属 Codonopsis(黨參屬)
      incl. Campanumoea

  タンゲブ属 Cyclocodon(輪鐘草屬) 東アジアに3種
    タンゲブ
(タイワンツルギキョウ) C. lancifolius(Campanumoea lancifolia,
         Codonopsis lancifolia;輪鐘花) 南西諸島・臺灣・福建・兩湖・
         
・兩廣・四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・インドシナ・マレシア・ニューギニア産

  Cyananthus(藍鐘花屬)
 漢土・ミャンマー・ヒマラヤに約20種、『雲南の植物』215-216に5種

  ハナブサソウ属 Hanabusaya(金剛風鈴屬)
1種
    ハナブサソウ H. asiatica
朝鮮産

  Heterocodon(異鐘花屬)
 北米西部に1種

  ホシアザミ属 Hippobroma(馬醉草屬)

  オオミゾカクシ属 Legousia(神鑑花屬) 歐洲・北アフリカ・西アジアに6種

  ミゾカクシ属 Lobelia(半邊蓮屬)
      incl. Hypsela, Pratia

  Pankycodon(山南參屬)
 1種
     P. purpureus(山南參)
雲南・貴州・チベット・ヒマラヤ産 『全国中草葯匯編』下/378

  タニギキョウ属 Peracarpa(袋果草屬)

  Phyteuma(裂檐花屬)

  キキョウ属 Platycodon(桔梗属)

  ユウギリソウ属 Trachelium(療喉草屬)

  キキョウソウ属 Triodanis(異檐花屬)

  ヒナギキョウ属 Wahlenbergia(藍花參屬) 
      incl. Ceratostigma
   
 キキョウ属 Platycodon(桔梗 jiégěng 屬)には、次の1種がある。

  キキョウ P. grandiflorus(桔梗)
   
 漢名桔梗は、根が引き締まって堅いことから。
 李時珍『本草綱目』桔梗の釈名に、「此の草の根、結実にして梗直、故に名づく」と。
 同書に、「白薬別録。 梗草別録。 薺苨本経。符巵」と。
 朝鮮名はトラジ。漢名の道拉基(ドウロウキ,dàolājī)は、その音写。
 和名キキョウは、桔梗の呉音ケチキョウの転訛。
 アリノヒフキの名は平安時代からある。一説に、花瓣にアリの出す蟻酸が触れると、火を吹いたように赤くなることから。一説に、アリはキキョウを好み、春にその根を食べ、近くに巣を作るが、その形が火山乃至む火吹きに見えることからか、という
(『週刊朝日百科 植物の世界』)
 トトキはツリガネニンジン、根を食用・薬用にすることが共通する。
 『本草和名』桔梗に、「和名阿利乃比布岐、一名乎加止々岐」と。
 『延喜式』桔梗に、「アリノヒフキ、アリノヒフキクサ」と。
 『倭名類聚抄』に、桔梗は「和名阿里乃比布木」と、また苻■{艸冠に扈}は「和名乎加土々木」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』に、「桔梗 アリノヒフキ和名鈔 アリノヒアフギ ヲカトゝキ古歌 ヒトヱグサ同上 キチカウ 佛吉草和方書 クハンサウ信州 セイネイ江州 今ハ通名キキヤウ」と。
 岩崎灌園『本草圖譜』(1828)に、「桔梗(キチカウ) ありのひふき
和名抄」と。
 英名 Baloon flower は、蕾の形から。
 北海道・本州・四国・九州・奄美・朝鮮・河北・東北・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・東シベリア南部・極東ロシアに分布。
 日本では、古くから観賞用・食用・薬用に栽培する。
 全国では絶滅危惧Ⅱ類(VU)、埼玉県では絶滅危惧ⅠB類(EN)。
 雌雄異熟。雌蕊に先立ち、雄蕊が熟す。
 根はサポニンを含み 有毒、食うには毒抜きが必要。
 中国では、根を薬用にする。『中薬志Ⅰ』pp.383-384 『全国中草葯匯編』上/666 

 日本では、生薬キキョウは キキョウの根である(第十八改正日本薬局方)。
 また、屠蘇散(とそさん)は、中国の魏の名医 華陀(かだ)が処方したと伝えられる漢方薬、肉桂山椒白朮・桔梗・防風陳皮などを調合したもの。これを清酒または味醂につけたものを屠蘇酒と呼び、正月に飲む。
 李時珍『本草綱目』(ca.1596)人参の集解に、「偽る者は、皆な沙參(サシン,shashen,しゃじん)・薺苨(セイデイ,jini,せいねい)・桔梗を以て根を采り、造作して之を乱す」と。沙參はツリガネニンジン、薺苨は Adenophora trachelioides。
 嫩葉・根を茹でて、水に晒して毒抜きすれば食用になり、救荒作物として用いられた。
 日本では、秋の七草の一。
 すなわち、『万葉集』巻八(1537;1538)に「山上臣憶良(660-733)、秋の野の花を詠める歌 二首」に、

   秋の野
(ぬ)に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花
   萩が花尾花
(をばな)葛花なでしこの花女郎花(をみなへし)また藤袴朝貌(あさがほ)の花

とある「朝貌」は、今日のアサガオではなくキキョウであるとする説が 一般に行われている。詳しくは、アサガオを見よ。

 集中、ほかに 4首に詠われる朝顔のうち、10/2275;14/3502 の例は、「さく」にかかる枕詞。

   朝かほは 朝露負いて 咲くといえど 暮陰
(ゆふかげ)にこそ 咲きまさりけれ
      
(10/2104,読人知らず)
   展転
(こひまろ)び 恋ひは死ぬとも いちしろく 色には出でじ 朝容(あさがほ)の花
      
(10/2274,読人知らず)
   言
(こと)に出でて 云はば忌(ゆゆ)しみ 朝貌の 穂には開(さ)き出ぬ 恋もするかも
      
(10/2275,読人知らず)
   わ(吾)がめづま
(目妻) ひと(人)はさ(離)くれど あさがほの
     とし
(年)さへこごと わ(吾)はさ(離)かるがへ (14/3502,読人知らず)
 
 桔梗の語の初見は、『出雲国風土記』(733)
 平安時代には、

   あきちかう のはなりにけり 白露の をれる草ばも 色かはりゆく
    
(紀友則、『古今和歌集』巻10物名「きちかうの花」)
 
 ききょうという音の初見は、清少納言『枕草子』第67段「草の花は」に、「をみなへし、ききやう、あさがを、かるかや、云々」とあるものや、紫式部『源氏物語』手習に、「かき(垣)ほにう(植)えたるなでしこもおもしろく、をみなへし・ききやうなどさきはじめたるに」とあるものなど。 
 『花壇地錦抄』(1695)巻四・五「草花 夏之部」に、幾つかの品種を挙げる。


跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
クサコアカソウ シュロソウ スハマソウ イワチドリ チダケサシ 跡見群芳譜トップ 野草譜index